LaTeX 文書の書き方 テキストの補足とまとめ

入門用文書

ここでは,主にLaTeX2e への道に従って LaTeX 文書の作成方法を説明する。
この文書は,"The Not So Short Introduction to LaTeX2e" という文書の Version. 3.13 の和訳である。オリジナルの文書(現在のバージョンは 5.01)やその他の言語訳は,CTANのlshort にある。詳細な内容を調べたりする必要がなければ,LaTeX の学習はこの文書で十分である。
以下,この文書の章に沿ってTeXの使い方を説明する。

「LaTeX2eへの道」の利用方法

印刷

印刷をして使用したい場合は,dvi 形式のファイルをダウンロードして dviout を使用して印刷する。PC に dviout がインストールされていない場合は下の pdf 版を印刷しても良いが,dviout を利用するほうが若干きれいに印刷される。
印刷版は用意しないので,必要な場合は各自印刷すること。

コピー

この文書中のサンプルソースを使用したい場合は,pdf 版から必要な部分をコピーしてソースファイルに貼り付ける。

以下,数式の入った簡単な文書を作成方法を学習する。目標は,サンプル文書のようなをレポートを作成することである。

第1章

全体の注意

テキストに\(バックスラッシュ) とあるのは,日本語環境では¥となる。従って\の部分は¥を入力する。

1.3 LaTeX の入力ファイル

空白文字

半角空白:連続していても,一つの空白として扱われる。
全角空白:他の全角文字と同じように扱われる。つまり,入力した数だけ空白が入る。

特殊文字

特殊文字は,\で始める。

コメント

文中に % があると,そこから行の終わりまで無視される。

1.5 文書のレイアウト

次は,LaTeX の最小構造である。

\documentclass{jsarticle}
\begin{document}
 文章
\emd{document}

レポートの構造例

日本語の文書クラスには,jarticle, jsarticle, jreport, jbook,縦書きには,tarticle, treport, tbook などがある。学生のレポートなどは,article(欧文の場合)または jsarticle が適当である。ただし jsarticle がインストールされておらずエラーになる場合は,jarticle を指定する。
また,jsarticle は A4 をデフォルトとしているので,下の例で A4 の指定は無くてもよい。

LaTeX でレポートを作成するには,基本になる文書を作成しておいて,必要に応じて修正しながら利用すればよい。次の例は,レポートに利用できる構造の例である。
不要であれば \subsection 等を省略する。また構造を見易くするため,段下げなどをしておくのがよい。

\documentclass[a4paper,11pt]{jsarticle}
\usepackage{amsmath}
\date{ 日付 }
\author{ 自分の名前 }
\title{ タイトル }
\begin{document}
\maketitle
\section{ 節の名前 }
\subsection{ 更に小さな節 } (節を細かく分ける場合)
本文
\subsection{ 次の小節 }
\section{ 次の節の名前 }
\subsection{ 小節 }
\begin{thebibliography}
ここに参考文献を書く
\end{thebibliography}
\end{document}
\documentclass[a4paper,11pt]{jarticle}
\usepackage{amsmath}
\date{2011年10月24日}
\author{片岡 武}
\title{\LaTeXe 入門}
\begin{document}
\maketitle
\tableofcontents
\section{\TeX と \LaTeX}
\TeX はテックやテフと呼ぶ。D. E. Knuth が作った文書組版ソフト。
\section{\LaTeX 文書の書き方}
\subsection{基本}
ここでは,\LaTeXe の基本を解説します。
\newpage
\subsection{構造}
構造は,・・・です。
\end{document}
\documentclass
執筆者が作成しようとしている文書の形式をまず最初に知らせるために使用する。
jarticle は和文の論文・レポートのときに使用する
\usepackage
LaTeX システムに新しい機能を加えるパッケージを読み込んだりする。
この例では無くても同じであるが,数学記号を使う場合はこの amsmath を指定する。
\maketitle
\author や \title に基づいてタイトルを作成する。\author や \title の順序を変更しても,作成されるタイトルは同じになる。
\tableofcontents
目次を作成する。ただし,作成するためには platex を2回実行しなければならない。
演習

上の1.5にある例を2度コンパイルして,1度目では目次が作成されないこと,2度目で目次が作成されることを確認せよ。

第2章

2.2 改行・改ページ

改行は,空白行を入れるか,\\ で行う。\\ ではインデントは行われない。インデントのコントロールは,\indent と \noindent で行う。
改ページは,\newpage で行う。

演習

テキスト 2.1 節の3つの例を1つの文書に入力し,改行,改ページせよ。そのとき,空白行と \\ によるインデントの違いを確認せよ。

2.3 定義済みの文字列

演習

文書に

\西暦
\today

\和暦
\today

と入力し,日付がどのように異なるか確認せよ。

2.4 特殊文字と特殊記号

$ & % # _ { } ~ ^ :これらを出力するためには,前に¥(ASCII ではバックスラッシュ)を付ける。
バックスラッシュ自体は,$\backslash$ で出力される。半角 ¥ 自体は,他のパッケージが必要。
チルダを大きく出したい場合は,$\sim$ を使う。

その他,定義済みの文字列として,\today, \TeX, \LaTeX, \LaTeXe がある。
これらの文字を書く場合は,

のいずれかを行う。

引用符(")は,引用符自身を使うのではなく,` を2つと ' を2つ使う。

省略記号(...)は,\ldots を使う。

演習

"日本語",http://ss.sguc.ac.jp/~kataoka/okadai/elementary を直接入力した場合と,テキストのように書いた場合の違いを確認せよ。

2.7 表題,章見出し,節見出し

\section や \subsection などの意味と効果は,上の1.5の例を確認。

\tableofcontents で目次を作成するが,一度 platex を実行しただけでは,「No file ~.toc.」のように出力されて,目次を作成するためのtocファイルが無かったため,目次が作成されなかったことが伝えられる。このメッセージが返された場合は,もう一度platexを実行することで目次が作成される。(1.5 演習参照)

2.8 相互参照

図,表などの相互参照には,\label{ラベル名},\ref{ラベル名} ,\pageref{ラベル名} を使う。

演習

テキストの相互参照の例を,上の1.5節の例に入れてその効果を確認せよ。
特に,
A reference to this subsection \label{sec:this} looks like:

``see section~\ref{sec:this} on page~\pageref{sec:this}.''
を別ページ,別セクションに分けてその違いも確認せよ。

2.9 脚注

脚注には,\footnote{注釈文章} を使う。

2.10 フォントの指定と文字の強調

文字をゴシック体で指定するには \textgt{ゴシック体です} と書く。明朝体も \textmc を使って同様に書く。
その他,文字を大きくするには,\large,\Large,\LARGE を使う。これらは,{\LARGE 大きな文字} のように,{ } で囲む必要があるので,注意すること。

\emph{文字列}。文字列が日本文の場合はゴシック体に,欧文の場合はイタリックになる。

演習

教科書の例の他に,上の例も入力して,その結果を確認せよ。

2.11 環境

箇条書きや表などは,テキストを \begin{環境名} と \end{環境名} で囲み記述する。このような形式のものを環境と呼ぶ。環境名には,箇条書きや表などを指示する名前が入る。
以下はその環境名である。

  1. 箇条書き enumrate(番号付き),itemize(記号付き),description(表題付き)
  2. 左右中央寄せ flushleft, flushright, center
  3. 引用 quote
  4. 文字通りの出力 verbatim
  5. 表 tabular (詳細は以下)
    \begin{tabular}{列指定}
      表本体
    \end{tabular}

2.11.5 表

書式は
\begin{tabular}{列指定}
  表本体
\end{tabular}

セルの区切り
& でセルを区切る
\\(英語環境だとバックスラッシュ2つ) で改行
各項目(セル)内の位置
r, c, l で順に右・中央・左揃えを指定
縦線
| の入った位置で縦線を指定
横線
\hline で横線を指定

{r c c} : 3列で区切りの縦線はなし。セルの中では,順に右・中央・中央揃え
{|r|l|} : 2列で区切りの縦線あり。順に右・左揃え

演習

次の表を作成せよ。

用途 欧文  和文(横) 和文(縦) 和文(横 新)
論文・レポート article  jarticle tarticle jsarticle
長い報告書 report jreport treport -
book jbook tbook jsbook

第3章

ここでは,数式の書き方を学ぶ。数式は TeX がもっとも得意とする組版のひとつである。

3.1 概要

段落内の文中
\( と \),$ と $ または \begin{math} と \end{math} で囲む
一つの段落として
\[ と \] または \begin{displaymath} と \end{displaymath} で囲む
この場合,数式に番号は付かない
数式に番号を付ける場合
\begin{equation} と \end{equation} で囲む。
数式の参照は,\label と \ref を使う。
$\lim_{n \to \infty}
\sum_{k=1}^n \frac{1}{k^2}
= \frac{\pi^2}{6}$

\begin{displaymath}
\lim_{n \to \infty}
\sum_{k=1}^n \frac{1}{k^2}
= \frac{\pi^2}{6}
\end{displaymath}

\begin{equation}
\lim_{n \to \infty}
\sum_{k=1}^n \frac{1}{k^2}
= \frac{\pi^2}{6}
\end{equation}

から,上記の3つの違いを確かめられる。

(\infty:無限大記号)

数式中の空白・改行
数式中の空白文字や改行は無視される。空白を入れるには,\,,\quad,\qquad などを使用。
空行
許されない
通常の文字
変数として表示される
演習

上の例の3つの式の違いを確認せよ。

3.3 数式の書き方

ギリシャ文字
\alpha,\beta,\gamma,大文字は,\Gamma,\Delta など。
上付きと下付き
^ と _
平方根
\sqrt[・]
ベクトル
\vec,\overrightarrow,\overleftarrow
分数
\fraq{...}{...}
積分記号
\int
積分区間を表示する場合は,\int_{...}^{...}
amsmath パッケージを使用すると,重積分 \iint や \iiint も使える。
総和記号
\sum
開始の条件と終了値を指定する場合は,\sum_{...}^{...}
積記号
\prod
開始の条件と終了値を指定する場合は,\prod_{...}^{...}
括弧
( を直接使うほか,\{ や \| など。
数式の高さに合わせた調整を行うには,\left を開き括弧の前に,\right を閉じ括弧の前に付ける。
三点リーダ
\ldots, \cdots, \vdots, \ddots

3.4 数式モードにおけるスペースの制御

\,(円とコンマ),\:(円とコロン),\;(円とセミコロン),\ (円とスペース),\quad,\qquad の順にスペースが広くなる。\quad は全角の M と同じ幅となる。
逆につめる場合は \! を使用する。

その他,数式の中でローマン体を使用する場合には,\mathrm{} を使用する

3.5 数式を垂直方向に揃える

行列
行列には大きな括弧と array 環境を使う。array 環境は表と同様に指定をする。
複数行の数式
eqnarray, eqnarray*(数式番号が付かない) 環境を使用する。
位置は {rcl} で固定されている。つまり,順に右揃え,中央揃え,左揃えとなる。
1つの式を複数行に書く場合も使用できる。
その他
equation など他の数式環境の中で使える split 環境もある。& で位置揃えをするのは同じ。
また eqnarray は不完全であるので,amsmath パッケージには align 環境がある。align 環境では,下の例のように & は等号の前に付ける。

\begin{align}
  f(x) & = \cos x \\
  f'(x) & = -\sin x \\
  \int_{0}^{x} f(y)dy & = \sin x
\end{align}

その他

これらの他に,AMSLaTeX を使った数式の例は,AMSLaTeX に付属の testmath.textestmath.pdf というファイルを参照のこと。

演習

サンプル文書に書いてある数式を作成せよ。(図については次の章で説明するので,不要)

第4章

bmpファイルの挿入

\includegraphics[オプション]{ファイル名}

dviout for Windows では bmp 形式の画像ファイルを挿入できる。以下の作業をして,画像を取り込んでみる。

  1. excel.bmp をダウンロードするか,各自 bmp ファイルを作成する。
  2. \usepackage[dviout]{graphicx} として,パッケージ graphicx を読み込む
  3. TeX のソースに
    \includegraphics[width=15cm, height=12cm]{excel.bmp}
    を挿入。値は適当に変更すること。

dviout で確認してモノクロになる場合は,dviout の Option → Set Parameters → Graphic で GIF: 欄の色数を増やす。

4.1 EPS ファイルの挿入

\includegraphics[オプション]{ファイル名}

以下の作業をして,画像を取り込んでみる。

  1. PC の gs フォルダから,tiger.eps を TeX の作業用フォルダにコピー。
    見付からない場合は,ここからダウンロード
  2. bmp ファイルの場合と同様に,\usepackage[dviout]{graphicx} として,パッケージ graphicx を読み込む
  3. TeX のソースに \includegraphics{tiger.eps} を挿入

dviout で確認してモノクロになる場合は,dviout の Option → Set Parameters → Graphic で GIF: 欄の色数を増やす。

JPEG や GIF などの画像ファイルからEPSファイルを作成することも可能である。特に上のbmp形式はまったく圧縮されていないため,ファイルサイズが非常に大きい。EPSに変換する方がよい。変換ツールについては, 変換ツール - TeX Wiki を参照のこと。

画像補足

図の自動配置と図表番号・キャプション

図に \begin{figure} と \end{figure} のように figure 環境を使うことで,自動的に配置されるようにしたり,番号・キャプションなどを付けることができる。

\begin{figure}
\centering
\includegraphics[・・・]{ファイル名}
\caption{キャプション(数式も可能)}
\label{ラベル名(任意の文字列)}
\end{figure}

\centering により図は中央に配置される。
\includegraphics は上と同様で,サイズも指定できる。
\caption は図のタイトルで,文字だけでなく数式も使用できる。
\label は先に説明したもので,\ref{ラベル名} で図の番号と自動的に対応させて参照できる。

PDFファイルの作成

dvi ファイルからPDFファイルを作成するには,dvipdfm を使用する。コマンドプロンプトで

dvipdfm dviファイル名

でdviファイル名と同じ名前(もちろん拡張子は異なる)ファイルが作成される。

4.2 参考文献

thebibliography 環境を使用する。
参考文献のリストは,項目ごとに \bibitem{参照名} の形式を用いる。
文中で引用する場合は,~\cite{参照名} とする。
 (~ を用いるのは,改行を抑止するため)

演習

サンプル文書にあるように,関数の図を挿入せよ。(図については次の章で説明するので,不要)
また,参考文献も作成せよ。

作成例